はじめに

次世代自動車としては電気自動車が主流をなすと考えられますが今後10年に限るとエンジンも効率化を図り進化するでしょう。20年後については現在から推測することは困難であまり意味もありません。

今後の電気自動車の記事については日経automotive、次世代自動車2019(日経ビジネス)、2020年版電動化車両・関連部品市場の現状と将来予測(総合技研)、2020年版電気自動車関連市場の最新動向と将来予測(総合プラニング/SG総研/TMリサーチ)を参照しました。

素材についても車体から窓ガラスまで改良が予想されています。しかし、いずれの文献にもタイヤについての記載はありませんでした。タイヤは単なる車体を乗せるだけの材料ではなく、車を安全に快適に無駄なエネルギーを使わず目的地まで届ける重要な部品です。

EV化とタイヤに関する関心は薄いようですがEV化はタイヤ・ゴムを一段と進化させる機会のように思われます。

目次

次世代自動車の躍進 いつ何が増えるのか?

引用:日経ビジネス次世代自動車2019


日経ビジネス次世代自動車2019によると次世代車としては2030年代まではハイブリッドが伸び、2040年代にはPHVが主体になると推定されています。そしてその後にEVが伸びて来ると予想されています。

表 次世代自動車の増加予想

グラフにすると次のようになります。

次世代自動車EVとエンジン車の生産予想

引用:日経ビジネス次世代自動車2019


エンジン車は次第に減少し、エンジンを搭載したHEV(ハイブリッド)、PHEV(プラグインハイブリッド)が増加します。エンジンのないEVは2030年以降に増加すると予想されています。

図 次世代自動車の増加予想

エンジンは減少して無くなるのでしょうか。エンジンの搭載率を推計したデータを次ページに示します。

エンジンを搭載した自動車の予想

引用:2020年版 電動化車両・関連部品市場の現状と将来予測、総合技研


図 乗用車台数とエンジン搭載率の変化予想

エンジン車規制

この予想でも2030年まではHEV、PHEVが増加し、エンジンを搭載した車は割合としては減少しますが2030年でも90%以上を占めると予想されています。

EVの現状

引用:EV新時代にトヨタは生き残れるか、桃田健史、株式会社洋泉社、(2017)


最初に時速100km/hrを達成した電気自動車

電気自動車はガソリン車に取って代わってEVだけの時代は来るのでしょうか。どこまでEVが進歩するかにより、最終的にはユーザーが決めるでしょう。

かつてEVが40%も市場を占めていた時代がありました。1900年頃のアメリカではEVが約40%もあり、残り約40%は蒸気自動車で、エンジン車は20%程度でした。その後T型フォードのエンジン車が出て来てエンジン車が主流になりました。

EVの欠点は基本的に今と変わりません。充電に時間がかかり、走行距離が短いことでした。5分で充電できて、500km走行でき、車体が20%軽くなり、バッテリーが10年間以上使用でき、価格がエンジン車と同等以下になればEVが主流になるでしょう。

現段階では充電時間が許容でき、走行距離も長くない使い方の、軽自動車のような用途のEV化は伸びると思います。

次にEVの課題について整理しました。

EVの課題


電気自動車(EV)とエンジン車の比較をすると車両価格、燃費・電費、利便性、安全性の点でEVが優れていると言えるところまで達していません。当分の間は電池を含めたEVの改良とエンジン車の改良で両車とも共存するでしょう。

表 EVの特性と課題

EVも含めて次世代車に使用される部材の変化について調べてみました。

次世代自動車の部材の変化

引用:日経ビジネス次世代自動車2019


エンジンだけでなく自動車部品のボディーなどの部材の変化を予想している記事がありました。傾向として軽量化と高性能化の方向にあります。 しかし、タイヤについては記載がありませんでした。

表 次世代自動車の部材の変化予想

EV化によるタイヤに対する要求性能


電気自動車(EV)のタイヤに求められる性能としては基本的にはエンジン車と同じですが特性の違いから、高級車では安全性、静粛性、操縦性などに、汎用車では価格、安全性と低燃費性に重点が置かれるでしょう。

EVタイヤの要求性能
・安全性(ウェットスキッド性能)
・耐摩耗性(耐偏摩耗性)
・低燃費性
・静粛性
・操縦性
・タフネス(悪路走行性)
・空気圧保持性
・(低価格)

電気自動車の種類に応じたタイヤの課題を次のページに示しました。

EV用タイヤの課題


高性能で高価なTESLAから大衆車の宏光MINI EV まで次世代EVが出てきました。それぞれタイヤに要求する性能は異なり、大きく3種に分類しました。それぞれのEVのタイヤとそのゴムに対する要求項目を以下のようにまとめました。

表 EV用タイヤの要求性能

EVもタイプによって使われ方と性能が大きく変わり、高級車・スポーツ車はエンジン車を上回る性能を持ち、重たい車体を急加速するためタイヤに対する負荷は極めて大きくなります。タイヤも大きな負荷に応じた性能のものでないと事故の要因になります。

また、タイヤの低燃費性能はEVではエンジン車より効果が大きくなり重要になります。

次のような報告があります。

EVとエンジン車タイヤの低燃費性能の効果の違い

引用:中手紀昭;野田明;原一平;田中隆浩 自動車技術会秋季講演会,2012,20125663


図 EVとガソリン自動車のタイヤの燃費(電費)への寄与

燃費(電費)に対するタイヤの寄与はガソリン車では約6%程度ですがEVになると約23~29%にもなります。EVではタイヤの低燃費化の寄与が大きいことが分かります。

タイヤを低燃費タイヤに変えて燃費を通常タイヤより30%低減できるとするとガソリン車では燃費の1.8%をEV車では約8%燃費が向上します。一回の充電で運転可能距離が100km程度と短いものもあり、タイヤの燃費性能が非常に重要になります。

EV車と次世代自動車のタイヤに関する専門家の意見

(雑誌などに記載されたタイヤ専門家の意見も載せました。)
引用1: Polyfile 2010.4, p40
引用2: 自動車技術 年鑑、74,(8),136 (2020)


表 EV・次世代自動車に関する要求性能

まとめ


電気自動車もガソリン車もタイヤに要求される性能は基本的には同じようです。しかし、電気自動車特有の性能の違いがあります。ガソリン車より動力が静かなためにタイヤの出す音の改善が求められます。また、ガソリン車以上に一回あたりの充電で走行できる距離が短いため小型車や軽自動車では低燃費性能を、そして大型のスポーツカーや高性能高級車ではガソリン車以上に耐摩耗性と耐偏摩耗性を要求されるでしょう。EV化によってタイヤも変わるように思われます。

次の節では各社の電気自動車用タイヤについてネット情報、文献や特許などの調査結果を報告します。

なお、本稿は執筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等の見解ではありません。

【第4回】タイヤはどのように変わるのか≫

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