新型コロナが少し落ち着き、交通の状況が良くなり、人の移動が増える中、セミスチールタイヤ市場はゆっくりと改善している。ただし、市場の消費力は限られているため、生産者の在庫が多く、生産能力も限定的だ。更に販売商社は慎重で生産者への販売からの圧力は強く、一部の製品の値上げはスムーズに行えていない。
5月のセミスチールタイヤ市場の取引は依然として横ばいで、市場は弱く、需要も低調だった。6月に入りセミスチールタイヤの販売量は好転したが、販売商社は売れる自信がなく、代理店には依然として在庫が少なく購入意欲もない状況が続いた。そのため、コスト高で生産者がタイヤ価格を上げても、市場では上手く価格を上げられなかった。
下に示すグラフで分かるように、4月の自動車の生産と販売は大幅に減少し、過去10年間の同時期と比較して最低のレベルとなった。乗用車の生産台数は996,000台で、対前月比が47.1%、対前年比が41.9%減少し、販売台数は965,000台で、対前月比が48.2%、対前年比が43.4%減少した。中国の国内市場では依然として売れ行きは不振であった。自動車サプライチェーンの供給は不安定で、一部の地域の自動車工場の生産量は依然として低調だった。さらなる要因としては、自家用車による移動の制限が続き、消費意欲も乏しかったことも挙げられる。この影響を受けて、セミスチールOEタイヤの需要は対前月比および対前年比ベースで大幅に減少した。 SCIによると4月の乗用車用OEタイヤの需要量は498万本と推定され、昨年より41.9%減少した。
出典:中国自動車メーカー協会
出典:中国自動車メーカー協会
2022年、中国のセミスチールタイヤの輸出は比較的好調に推移したように見えた。しかし、4月のセミスチールタイヤの輸出量は181.95ktで、対前月比が6.82%、対前年比が0.86%減少した。結果的に1月のセミスチールタイヤの輸出量が対前年比増加したことを除けば、2月から4月の輸出量は昨年よりも減少した。中国の国内物流・輸送環境はやや改善したものの、輸送能力には今までと差があった。その上、売上を伸ばすにはまだいくつか港にも問題がある。離職率が低く、配送効率に影響を及ぼした。それにも関わらず、4月の中国の乗用車用タイヤの輸出は、海外からの旺盛な需要に支えられ、前年同期との差は縮まった。
3月以降、消費者の旅行は制限されている。休暇中も車による旅行は限られていた。また、4月に作業・生産を再開した後、多くの工場がバブル戦略を採用し、工場の多くの人が仕事場と家庭の間を行き来した。そのため、セミスチールタイヤの全体的な需要は限られ、ほとんどの代理店は、販売量が昨年の同時期よりも少ないと述べた。 5月は高速道路が閉鎖されず、人の移動が増加したため、4月に比べてセミスチールタイヤの市場需要が回復した。しかし、石油価格の高騰、限られた長距離移動、弱い消費のために、セミスチールタイヤの最終需要は限定的な改善しか見られなかった。 5月も、代理店は在庫管理を徹底して、在庫を可能な限り抑制した。
原料:来月にはタイヤの主原料である天然ゴムの価格は値上がりが予想される。合成ゴムの価格は狭い範囲で変動すると予想され、平均価格は5月から上昇するだろう。同時に、カーボンブラックの価格は高止まりするであろう。タイヤ生産者は依然として高い生産コストに悩まされるだろう。
需要:OEタイヤ市場では、乗用車の生産は5月にやや回復したが、通常の水準には回復していない。 6月には多くの地域での自動車消費が増え、自動車産業のサプライチェーンの回復により、自動車生産がさらに増加し、乗用車のOEタイヤ需要が改善すると予想される。交換用タイヤ市場では、旅行での人々の移動が増え、更に夏の到来により中国のタイヤ交換需要は改善すると思われる。交換用タイヤの需要は、勢いがあり、ゆっくりではあるが安定した消費になるであろう。輸出面ではタイヤの輸出受注は見込まれるが、インフレの圧力により海外需要は弱まるかもしれない。
供給:6月の初めに、多くのタイヤ生産者はドラゴンボートフェスティバルの休暇中に生産を減らすか中断すると予想される。 また、全体の販売量が少なく生産者の在庫が多いため、タイヤ工場の稼働率は限定的な上昇になる可能性がある。 需要のピークシーズンが到来することで、市場での売上高の改善が見込まれる。 ただし、売れる自信がなく代理店は引き続き在庫を注意深く管理することになるであろう。
ほとんどのタイヤ生産者の稼働率は低くなると予想される。中国の国内市場での売上高は、季節的な需要に支えられて改善するであろう。 ただし、販売店は売れる自信がなく、生産者の在庫が減るには時間がかかるだろう。 生産者に対して販売からの圧力は続き、タイヤ製品の値上げの実施は遅れるだろう。